電気通信大学60年史
後編第6章 高度経済成長期の電気通信大学
第8節 短期大学部の拡充
8-1 電子工学科の設置
電子工学科は1966年(昭和41年)4月1日より入学定員40名で発足した。その背景には、大学入学志願者の急増対策だけでなく、社会の通信業界にも多くの変革を生んだ時代でもあった。ひとつは半導体が電子管にとって代わったことや、パルス技術が通信や産業機器に多く使用されてきたこと、二つ目は人工衛星を使った通信が実用化の目安がついた時代であった。電子装置の小型化、高密度化、高性能化が米ソ2大国間の宇宙開発競争でしのぎをけずっていた時代であった。このような時代に、技術者として必要になった技術は、パルス技術、自動制御技術、そして新しい電子素子の開発技術の三つが大きな目標となった。電子工学科は、このような社会的変化を受けて新しい通信工学技術者を指向して発足した。宇宙開発技術が民間の産業にも広く普及しはじめ集積回路(IC)が出現し、コンピューターが大きく進歩し、世はまさにコンピューター時代になりつつある1968年(昭和43年)4月1日に本学科の定員は40名から80名に増員され、情報処理技術者向きの教科が設けられ情報処理コースが誕生した。従来からの電子回路の応用を目標とする電子工学コースと合わせてこの学科も二つのコースが設けられている。
電子工学コースは、エレクトロニクスに関する中堅技術者の育成を目標としているが、専門教育の主体は、エレクトロニクス回路技術であり、電子応用技術者として必要な教育科目が用意されている。電子回路学、電気測定学、固体電子工学、物性工学などとともに、物理実験、通信工学実験があり、電気理論演習と、回路演習室の充実とともに本コースの大きな特徴となっている。集積回路学、デジタル信号処理、パルス工学、自動制御などの電子応用的分野と、伝送回路網、電子機器学、マイクロ波工学、通信方式などの通信工学分野の中から、学生自らの意志に基づいて、必修科目が選ばれるようになっている。更に、情報処理教育が1年間を通して用意されており、いずれの分野にも普及している電子計算機に対処している。
情報処理コースは電子通信に関するものを基礎科目とし、コンピューターの機器の知識や利用技術と、コンピューターを使用するプログラミング演習、システム工学、情報通信などがある。コンピューターの技術と利用分野は今もなお驚異的に発展し続けている。したがって、この領域の教育体系も多岐にわたり、流動的な中堅技術者の育成を目的とする機関では、将来を予測するのは難しいが、近い将来を目途とした2、3の準備は既に進行している。
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8-2 通信専攻科の設置
本専攻科は第一級無線通信士を養成することを目的として設けられた。短期大学卒業以上の能力を持つ者に、1ヶ年の教育課程で第一級無線通信士の国家試験の予備試験、実技試験及び英語の試験の免除を受けさせ、よって免許の取得に便ならしめようとしたもので、1966年(昭和41年)4月1日に入学定員20名で発足した。この背景には、これより以前に短期大学と並ぶレベルに高等専門学校が発足し、国立電波高校の3校もやがて高等専門学校に移行する兆しがあり、その時は、電波高専は専攻科等を設けて第一級無線通信士の養成をするかとも思われ、かつて本学より下級の通信士養成校に、本学が追い越される心配があり、歴史的にみて本学もなんらかの手を打つことを迫られていた。5年制大学2部昇格運動があったり、暫定的に発足した短期大学も制度的に恒久化され、簡単には廃校もできにくい事情もあって、短期大学としての充実路線をすすめてきたものであった。通信専攻科の設置は第一級無線通信士の養成には大きな力となることは間違いないだろう。
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