最初期の受信用真空管
最初期の受信用真空管
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フレミングバルブ初期型(1910年代前半)
2極真空管の元祖。 1904年、無線電信の受信機用の検波器とし て、英国のフレミングが発明した。しかしそ の実体は「エジソン効果電球」を流用し、た またま検波に成功したもの。このサンプルは エジスワン社製と思われる比較的初期(1910 年代前半?)のもので、1910年代後期の船舶 用などに多用された形状。フィラメントは中 期以降の製品に多い純タングステン、プレー トは初期型の特徴である円筒状)。ベースは英 国標準のバヨネット型。 -
フレミングバルブ後期型 米国マルコニ-
米国マルコニー製(推定)の、比較的後期 の製品と思われる、洗練された形状のサンプ ル。然しフィラメントは初期に多用されたカ ーボン、プレートは3角形で2枚並列。ベー スは同じく英国標準のバヨネット型。 -
オーディオン最初期型 米国ディフォレスト(1907)
3極真空管の元祖。 1906年暮、米国のディフォレスト(日本で は最初ドフォレと呼ばれた)が、フレミング・ ヴァルヴにグリッドを挿入することで、世界 最初のアクティヴ・デヴァイス、3極真空管 を発明した。このサンプルは最初期の製品で、 民生用に先立って1907-08年に米国海軍で用 いられた。プレートとグリッドが片側(上部) のステムで支持されている。フィラメントは 反対側(下部)のステムで支持され、プレー ト/グリッドの片側に近接している(このサン プルのフィラメントは断線)。 -
球形オーディオン片翼型(1907)
1907年から一般用として発売されたもの。 ネイヴィータイプと同様グリッド、プレート がフィラメントの片側だけにあるため、片翼 型と呼ばれる。自動車電球用の球形ガラス・ バルブを用いたため、後の円筒形に対して通 称球形オーディオンといわれている。フィラ メントは2回路あり、片側のリードは電球用 ねじ込み型(キャンデラブラ)ベースに接続 され、他方は予備用として銅線のまま引き出 されている。 -
球形オーディオン用 電球マッキャンドレス
ディフォレストの依頼で初めて3極真空管 を作った電球メーカーのマッキャンドレス社 は、この自動車用電球の頂部にグリッドとプ レートを支持するための2個目のステムを追 加して球形オーディオンを製造した。ただし、 このサンプルのベースはキャンデラブラ型で はなく、欧州標準のバヨネット型。 -
R.4GEC/オスラム(1917-1918)
R.4は第一次世界大戦中(1917-18年頃)に、 米国の球形オーディオンの互換型として英国 で作られた。外形はよく似ているが、電極構 造はフランスTM型と同様の同軸円筒形。 球 形オーディオン使用の機器にそのまま使える よう、ベースはキャンデラブラ型、プレート、 グリッドはリード線のまま。 -
IDEEZET CIフィリップス(1918-1919) オーディオトロン
CIは1918-19年にオランダのフィリップス 社が始めて作った真空管の一つ。電極構造は 球形オーディオンのコピー。電極のリードを 外部機器に接続するため、両端にねじ込み型 ベースを設けているが、これでは機器への着 脱が不便だったと思われる。 -
オーディオトロンカニンガム(1915)
オーディオトロンは1915年、米国の小メ ーカーだったカニンガム社が民生用として発 表した3極管。細長い円筒状のガラス・バル ブ内に同軸円筒形のプレートとグリッド(ス パイラル状)と、V形のタングステン・フィ ラメント(片側ずつ使用可)がある。球形オ ーディオンの次に登場したため、チューブラ ー・オーディオンと呼ばれた仲間の第1号で、 製造が簡単なため低価格だったと思われ、ア マチュア無線局に多用された。この発表直後 から各社が類似の製品を発売した。 -
T ディフォレスト(1916)
タイプTは翌1916年、ディフォレストが オーディオトロンの後を追って作った。構造 はほぼ同じだが、フィラメントは1回路のみ。 遅れをとったにも拘らず、この形状の仲間に チューブラー・オーディオンという一般名称 が付けられているのは、やはり「元祖」に対 する敬意? -
AAB-5 安中電気(1920年頃)
AAB-5は1920年頃?日本の安中電気が作 ったもの。電極構造はほぼ原型と同じチュー ブラー・オーディオン族だが、電極の支持方 法など、各部に進化が見られる。 -
TMフォトス(1915)
第一次世界大戦勃発直後、球形オーディオ ンを雛形としてフランスTM(軍の通信隊) が開発し、電球メーカーだったフォトス、メ タル両社が作った高真空型3極管(1915年)。 初めて横向きの同軸円筒形の電極を採用した が、このいわゆるフランスTM型が英国のR 型はじめ、多くの初期型真空管のモデルとな った。また、このとき初めてソケットに挿入 する形式のベース(英/仏型と呼ばれる4ピ ン)が用いられた。 -
UV-102 東京電気
日本独自の初期型真空管として、球形オー ディオンの直後に作られた真空管の一つ。欧 米の初期型3極真空管(モアヘッドVT、A など)と電極構造はそっくりだが、そのもの のコピーではない例。 UV-102(推定)は現品に記載がないため、 型番が確認できないが、資料による推定。垂 直の同軸円筒形電極。リード線がすべて折損 してしまっているが、ベースなしの古典型。 TECのマーク付き。 -
CA ラウンド(1913年頃)
1913年頃の製品。英国マルコニー社のラウンドが考えた、一連の「ソフト・ヴァルヴ」3 極管の一つ。フィラメントは当時としては先進的な酸化皮膜型、グリッドは金網を円筒状 に丸めたもの。管頂にアスベストを封入した細管があり、受信感度の調整のため、この部 分を加熱して、内部のガス濃度を最適値に保ったとのこと。 -
CF-185族 3点 ディフォレスト(1916年頃)
第一次世界大戦に遅れて参加した米国で、 1916年頃から急遽作られた軍用管の一つ。 CF-185とは米海軍との契約番号で、同じ型番 の中に数種類のバリエーションがある。フィ ラメントは何れも酸化皮膜型。 左は初期型(ねじ込みベース付き。フィラ メントは断線)。中は海軍型3ピン・ベース付き。グリッド はガラス枠にワイヤーを巻き、その中心にV 形のフィラメントを挿入。 右は球形のガラス・バルブを使用。 -
タイガーマン(1916)
3極管の特許を逃れるため、米国の小メー カーは色々な工夫をこらした製品(主として 検波用)を産み出した。タイガーマン(1916 年)は1本の管の両端にフィラメントとプレ ートを対向させた2極管を2組設け、ガラス 管の外部にそれぞれ制御電極(グリッド?) を設けた擬似3極管。制御電極の効果はきわ めて僅か。複合管の元祖? -
モアヘッド(1917)
モアヘッド社は各種の標準型3極管を作っ ていたが、このサンプル(1917年頃の製品) はタイガーマンと同じ構造(ただし電極が1 組のみ)の擬似3極管。 これも検波用として実用になったか疑問。 -
ウィ-ガントヴァルヴ(1918)
ウィーガント社は擬似3極検波管を得意と して作ったメーカー。このサンプル(1918年 製)はタイガーマンやモアヘッドなどの仲間 と同じ電極構成だが、制御電極がガラス・バ ルブ表面の細く絞った部分にメタライズされ ているため、高周波では僅かながら制御力が ある? -
APソレノイド モアヘッド(1925年頃)
1925年前後のモアヘッド社製で、ヘアピン 状のフィラメントとワイヤーだけのプレート の外側に12回ほどソレノイド(コイル)状に 巻いたワイヤーが制御電極(グリッド?)。 一見リレーのように見える、擬似3極管の珍 種。 -
V.24 プロトタイプ 英国マルコニ-(1916)
1916年、英国マルコニーのラウンド大佐が、 高周波用として電極間静電容量を減らすため 開発した超小型3極管。プロトタイプは細い 円筒形バルブに同軸円筒状の電極を入れ、ソ ケットを用いず、各電極のリードを直接至近 距離から引き出したもの。 -
V.24 量産型 英国マルコニ-
プロトタイプをソケットに挿入できるよう 改良したもの。フィラメントはともに純タン グステンだが、後期の改良型(DEVなど) にはトリエーテッド・タングステンが用いら れた。 -
A シーメンス(1916年頃)
ドイツでは最初期の有線電話に用いられた リーベン管などのソフト・ヴァルヴの欠点を 除くため、1914年頃から開発を進め、間もな く高真空型の3極管タイプAを誕生させた。 グリッドは文字通り魚焼き網のような矩形で、 その下に相似形のプレートが、反対側にアー チ状の純タングステン・フィラメントがある。 ソケットは機器のパネルに押し込む形。 -
EVN171 テレフンケン(1916年頃)
1916年頃、テレフンケンで開発された。タ イプAと類似の構造だが、グリッド、プレー トともに円盤状。フィラメントは純タングス テン。特殊形状のベース・ピンを使用。