1980年代の商船の無線室(船舶無線局)
船舶無線局模擬展示
この展示は昭和40年代中期から後期にかけての一般的な商船の無 線室を実装に近い形で再現して、当時の海上通信の実体を理解する一助としようとするものである。特定の船舶無線局を再現したものではないが、主送信機として帆船日本丸に搭載されていたものを使用したので、本船の呼び出し符号JFLCによって他の設備も統一してある。
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500W中波送信機 TEG-500RD
中波・短波無線電信専用の船舶用送信機。中波帯の送信周波数は410, 425, 432, 454, 468, 480, 500, 512kHzで、電波型式A2, A1。 短波周波数帯は4, 6, 12MHzバンドで各バンドに呼出し周波数C及び通信周波数W1,W2の3波を有し、電波型式はA1のみである。全波水晶発振を用い、送信出力は中波・短波とも500Wである。電力増幅は真空管5P70のC級増幅で、自動同調方式である。運輸省航海訓練所の帆船日本丸の主設備であった。 -
1kW短波送信機 TCG-1000RD
短波無線電信専用の船舶用送信機。電波型式A1。送信出力1kW。送信バンド4, 6, 8, 12, 16, 22MHz帯。各バンドに呼出し周波数C, 通信周波数 W1,W2の3波を持つ。全波とも水晶発振によるが、4, 8, 16MHz帯, 及び6, 12MHz帯の各周波数は逓倍により得られ、22MHz帯は独立している。電力増幅は真空管5P70×2によるC級増幅となっている。また終段は自動同調方式で、遠隔制御により一挙動で変波が可能である。 -
125W補助送信機 NET-125B25A
大型船舶の補助送信機または漁船用の主送信機として設計された小型送信機である。真空 管の構成は6AQ5×4、UY-807、4P56で、送信出力は中波A2 60W、短波A1 125 Wである。AC100Vの電源ユニットを外付する。周波数範囲は405~535kHzの6チャネ ル及び、1.6~23MHzの9チャネルの水晶発振子が組み込み可能。24V200Aの蓄電池にて インバータを駆動して非常設備としても使用可能である。 -
2182kHz 警急自動受信機 ALM-46A
24時間の無線当直ができない船舶において、A3EまたはH3E電波のような無線電話2182[kHz]で発射される無線電話警急信号を受信して警告音を発し、直後に遭難通信が行われることを報せる受信機である。警告音はピーポーと聞こえる繰り返し音で、これを聞き漏らすことはない。無線電話の遭難信号は同じ周波数でメーデーメーデーと発声する。このシステムはGMDSS移行後も存続している。 -
全波受信機 NER-5212
85kHz~28MHzまでを7バンドでカバーする全波受信機である。ミニチュア管11本による高周波増幅1段、中間周波増幅3段のシングルスーパーヘテロダイン方式の受信機で、 受信感度は、出力100mW、S/N20dB、電波型式A1A,の条件で5μV以下である。中間周波数増幅段にクリスタルフィルタを備え混信の防止を図っている、小型漁船の無線電信受信に適している。 -
全波受信機 NER-5AF2
85~540[kHz] 0.6~28[MHz]の周波数帯をカバーする全波受信機で、独立した高周波回路 をもつメイン/スプレッドの二組のダイヤル機構を有する。メインダイヤルは全バンドをカバーするシングルスーパーで、スプレッドは船舶通信バンドのみをカバーする水晶制御の ダブルスーパー方式である。受信感度はA1A、出力100mW, S/N20dBの条件で5μV以下。周波数安定度は電源電圧10%変動に対して0.05%以内。通過帯域幅5及び1[kHz]。 -
時計
船舶用の時計。盤面の直径は12.5cm以上、3針式で秒針が中央にあり、15分から18分までと、45分から48分までの沈黙時間を赤で表示してある。沈黙時間中は500kHz±15kHzの電波の発射が禁止されており、その時間中、遭難通信の聴取が義務付けられている。 -
警急自動受信機
海上通信において、24時間の連続執務が不能な船舶が、付近で遭難事故が発生し、遭難通信が今にも開始されるという警報を受信する受信機である。A2A電波500[kHz]で遭難通信が行われた1999年2月まで使用された。遭難船舶から発射する警急信号を受信して、無線室、通信長室、船長室のベルを大音響で鳴らせて乗組員に危急を報じた。郵政省の型式検定試験に合格している。 -
船舶用ファクシミリ受信装置
世界の気象観測機関から送信される気象情報画像を、船舶上で受信する装置である。毎分の走査線数や画像の縦横比等の規格は、WMOにおいて、回転数60, 90, 120/min 協動係数576, 288と規定されている。記録機構部は記録幅12吋の60m巻きアルミ蒸着紙を使用する連続記録装置である。受信部はF3C電波専用で、シンセサイザ・プリセット方式により全短波帯をカバーする。 -
救命艇用携帯無線電 信電話装置 LBA-502A
本船の遭難時に救命艇に運び使用する。周波数500kHz, 8364kHz電信、2182kHz電話による遭難通信(手回し発電機による)、出力2W。モールス通信術を知っている者がいない場合でも、アンテナを立て発電機を回していればSOS de JFLC22という信号が送信され、22の付加された信号を受信した救助船の通信士には、すでに遭難船は船体を放棄して、救命艇から素人が送信していることがわかる。