電気通信大学60年史
今日編1章 電気通信大学の現状
第1節:基礎教育組織の現状
1-1 一般教育
- I 人文社会科学系列
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電気通信大学
正門本部:事務局・学生部
人文・社会・外国語研究室本学における人文社会科学系列とは人文科学、社会科学及び外国語を含み、自然科学系列と並んで一般教育等を構成して、電気通信学部に属するものである。
およそ大学教育がその実を挙げるためには、専門教育とともに一般教育が重視されねばならない。この一般教育こそ専門に偏することのない人間形成を目指すものであり、新制大学の一つの特色は一般教育課程の設置にあるとも言えよう。とくに本学のごとき理工系大学においては、いわゆる文科系の一般教育科目(人文科学、社会科学)や外国語の教育が有する意義は大きく、したがって、本学発足当時から初代学長寺沢寛一氏以下、大学当局はその重要性に留意してきたが、この伝統は現在にも受け継がれ、今後も生かされるべきものであろう。
- 人文・社会科学について
- (人文・社会科学の現状、学科目紹介)
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人文社会科学系列のうち、まず人文・社会科学について言及すれば、1978年度(昭和53年度)、人文科学の科目としては倫理学(林田新二教授)、心理学(滝沢武久教授)、歴史学(山上正太郎教授)、文学(古橋信孝助教授)が、社会科学の科目としては経済学(橋本壽朗助教授)、社会学(眞板一郎教授)、法学(井上治行助教授)、政治学(藤井昇三教授)が計8名の専任教官によって担当されている。更に6名の非常勤講師によって人文科学では哲学、芸術(美術及び音楽)が、社会科学では地理学(2種類)、社会思想史が開講されており、全体で科目数は両科学6ずつ、合計12である。
これら諸科目はいずれも4単位であり、学生は選択によって1週、1回、90分授業で履修し、人文科学12単位(3科目)以上、社会科学12単位(3科目)以上を取得することを必要とするが、とくに経営工学科の学生は経済学を必ず1年次で履修しなければならない。そしてこれら諸科目が1年次から3年次までの時間割に組まれているように、そこで履修の便が考慮されており、学生は在学中の大半を通じて人文・社会科学に親しむことが可能である。
また、本学では卒業研究を必修として4年次に提出する定めであるが、毎年、数名の学生は人文・社会科学専任教官の中から指導教官を選ぶことによって、両科学に関する卒業研究を行う意図と実績を示している。
なお人文・社会科学の専任教官はそれぞれ非常勤講師として短期大学部の一般教育諸科目を担当し学部・短大間の協力、緊密化に処していることを付記しておきたい。
- (人文・社会科学の将来)
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さて、本学の発展につれて一般教育の重要性はますます増大してきたが、実情は必ずしもこれに応ずるものではない。新制大学として発足以来30年間に、学科及び学生の著しい増加にもかかわらず、人文・社会科学において専任教官を伴う科目増は心理学、文学の二つにすぎない。やむなく非常勤講師によって科目を補充してきたのであるが、現状にあって一般教育の目的を果たすためには教官定員増が望ましく、この2、3年来、概算要求事項として地理学(教授1名)、社会思想史(教授1名)の「学科目の増設」を掲げている次第である。そして更には近時の人文・社会科学の発展にかんがみ、両分野における授業科目の多様化について新たな検討を加え、ますます一般教育の充実を期すべきであろう。
- 外国語について
- (外国語の現状、学科目紹介)
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本学の外国語教育は、現在第一外国語として英語、第二外国語としてドイツ語、フランス語、ロシヤ語の授業が行われている。
第一外国語は1年次及び2年次に履修する必修科目であり、学生は週2回の90分授業を30週にわたって受け、8単位を取得することが要求されている。第二外国語は1年次の4単位の取得が卒業の必要条件で、2年次になると選択科目となり、履修するか否かは学生の自由意志に任される。(なお通信工学科の場合には、第二外国語は1年次においても選択科目である)第二外国語としてどの科目を選ぶかは学生の自由であるが、受講者の数は現在ドイツ語が最も多く、以下フランス語、ロシヤ語の順となっている。外国語の教授者は兼担として英語が教授2名(大島仁・加藤知己)、助教授4名(石澤千代吉・諏訪部仁・社本雅信・福島治)、専任講師1名(酒井邦秀)の計7名であり、これに共通講座である言語工学の専任講師(古郡廷治)が加わって4単位分の授業を受持ち、更に東大・一橋大・商船大・共立女子大から出講する7名の非常勤講師の応援がある。ドイツ語は教授2(赤沼一郎・西尾幹二)、助教授2名(楢原良行・湯川敬弘)の専任者と、一橋大・農工大・横浜国大・中央大・立教大から出講する7名の非常勤講師が授業を分担する。フランス語は、専任教授1名(澤木譲次)で、非常勤講師として都立大と白百合女子大から各1名、更に女性1名がこれに加わる。ロシヤ語は言語工学の岡本哲也教授が専任として授業を担当し、1名の非常勤講師が出講して応援する。授業内容は、教養科目として、外国文化の理解と言語訓練を主眼とし、講読が主体となっているが、昭和46年にはL・L(語学発声装置)教室が作られ、聴解力の養成や発音練習を目的とした授業も行われるようになった。これも実用性を重視する時代の要請に応えたものである。
- (外国語の将来像)
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第二外国語が現在3科目にとどまっているのは、他大学と比較しても、必ずしも十分とは言えないので、将来スペイン語とか中国語とかを加えることが検討されている。また外人教師の任用は多年の懸案であるが、未だに実現の運びに至っていない。事前に解決しておくべき諸問題の中でも、外人担当の授業を必修とすべきか、選択あるいは随意とすべきかが、最大の問題で、これに対する解答が容易に出ないのである。必修とするには学生数は増加しすぎたし、選択あるいは随意とした場合には、熱意の低下は、学生ばかりではなく教師の側にも懸念されるからである。しかし外人教師の効用は、種々の面で疑いもなく大きいので、いずれ近い将来に、外人教師の姿を学園内に見ることになろうと思われる。
- 人文・社会科学について
- Ⅱ 自然科学系列
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西5号館:一般教育科目(自然科学系列)
人文・社会・外国語研究室- (自然科学系列の現状、学科目紹介)
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本学において、理学系の教養、基礎部門を担当する教官組織が自然科学系列である。これは、人文社会科学系列とともに、学内各学科同様、一応独立した組織として認められ、それぞれ主任を置いて自主的に運営されている。ただし学科のような講座制は取らず学科目別に「教室」という名称で分割し、現在は数学、物理学、化学、保健体育学の四つの教室から成っている。またこの外に、理学系の共通講座として、応用数学、統計数学、応用物理学、応用化学、応用理学の五つの講座が自然科学系列に併置され、それぞれ関連の教室と一体運営がなされている。自然科学系列の運営は、共通講座を含む「自然科学系列会議」における協議と決定に基づいて行われ、系列主任もまたこの会議で選出される。そして系列主任は、全学の学科主任同様、主任集会に出席して各専門学科との意志の疎通をはかり、かつ全学的な問題に関しても討議することが出来る。自然科学系列に属する教官の中には専門学科からの依頼により、4年次学生の卒研の指導、大学院修士課程の授業を担当する者もいるが、全体としては一般教育の授業が主たる任務であり、またそれぞれの専攻の分野における研究活動も活発に行われている。1978年(昭和53年)現在の学科目について記述する。
- 数学教室
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ここは一般教育「数学」の外に二つの共通講座「応用数学」と「統計数学」とが併置され、その人員構成は次のとおりである。
- 数学
- 田吉隆夫助教授・金澤稔助教授・内藤敏機助教授
- 応用数学
- 高野一夫教授・安香満恵助教授
- 統計数学
- 藤澤武久教授・赤平昌文助教授・大澤武久助手
- 物理学教室
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一般教育「物理学」の外に、共通講座「応用物理学」があり、それらの人員構成は次のとおりである。
- 物理学
- 遠藤博教授・安達健教授・松岡修助教授
なお、以上の外に、「物理学」と「化学」にまたがる共通講座として、次のものが設けられている。
- 応用理学
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- 物理学担当
- 水橋誠二助教授
- 化学担当
- 坂田朗助手
また一般教育の授業は、以上の専任教官陣に加えて、それぞれの学科目ごとに数名の非常勤講師を委嘱して実施されている。自然学科系列に包含される授業科目として以上の外に、「気象学」「生物学」「地学」が開講されているが、これらは現在、それぞれ非常勤講師が担当することになっている。
- (自然科学系列の将来像)
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一般教育が現在当面する問題は、最近の傾向である「学生の勉学意欲の低下」にどのように対処するかということであろう。このことはもちろん、入学試験の選抜方法を改善して、より優秀な学生を受け入れることが先決ではあるけれども、それと同時に、受け入れた学生をより効果的に教育する方法が探求されなければならない。現在、自然科学系列内に設けられた「一般教育研究会」において、あるいはまた、全学的な「制度改革問題委員会」等において、一般教育の改善方法が討議考究されつつあるが、2クラスの合併授業を1クラスの少人数制に切り替える等の措置も将来の課題であろうけれども、現状においては、いたずらに授業内容のレベルを低下させることなく、いかにして「わかりやすく」かつ「興味ある」授業を行うかの工夫が、教官側に課せられた当面の課題であると思われる。一般教育充実のために、将来少人数教育方式が志向されるとすれば、現在の教官定員は不十分であり、定員増あるいは専門学科教官の出講等の処置が必要となるであろう。また一般教育改善のために何等かのカリキュラムの変更が行われるとすれば、それに伴って自然科学系列教官組織の改変が行われる可能性もあるけれども、現在の段階ではまだ具体的な改善案は提示されていない。自然科学系列に包含される幾つかの共通講座は、もともと一般教育強化の目的で付置されたものであり、現在は研究組織としても成果をあげているが、このような組織を、より良い教育効果をあげるためにどのように運営活用するかということも、将来の課題であると思われる。
1-2 共通講座
- (共通講座(理学系)の現状、講座紹介)
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西2号館:共通講座(研究室・実験室)
本学には共通講座として現在11講座があるが、それらは工学系の電磁気学・実験工学・通信基礎学・電力工学・言語工学・流体工学の6講座及び本学に大学院(修士課程)が開設されるに際し、理学系の一般教育(学科目)から独立した応用数学、応用物理学及び応用化学と大学院固有の完全講座として認められた統計数学及び定員増によって発足をみた応用理学の5講座とから成る。
ここではこれらの理学系の5講座について紹介する。これらの5講座は現在、自然科学系列と一体運営を行っており、一般教育科目と専門授業科目とを担当している。また、大学院では応用数学講座・統計数学講座は情報数理工学専攻、応用物理学講座は物理工学専攻、応用化学講座は材料科学専攻の講座としてそれぞれの専攻の構成講座に位置づけられ、学生の指導と教育とを担当している。
次に共通講座を紹介する。
大学院担当関係について 応用数学講座 高野一夫教授・安香満恵助教授・*金澤稔助教授・*田吉隆夫助教授・*内藤敏機助教授 講義科目 論理代数学・位相幾何学・幾何学特論・代数学特論第一・代数学特論第二・微分方程式特論第一・微分方程式特論第二
(注)この講座は特異な構成であって、一般教育所属の教官(*印)も構成人員となっている。講義内容に対して定員不足が因をなしている。統計数学講座 藤澤武久教授・赤平昌文助教授 講義科目 応用確率過程論・数理統計学 応用物理学講 権平健一郎教授・伊東敏雄助教授 講義科目 非可逆過程論・量子光学第一 応用化学講座 国分信英教授・山崎昶助教授 講義科目 分析化学特論無機化学特論 各共通講座と所属教官及び学部への授業協力について 応用数学講座 高野一夫教授・安香満恵助教授 研究事項 リーマン幾何学(Riemanian Geometry)・非リーマン幾何学(Non-Riemannian Geometry)・非線型問題(Non-Linear Problem)・論理代数学(Algebra of Logics) 授業科目 応用幾何学・代数学第一・代数学第二・数学原論・解析学第一・解析学第二 統計数学講座 藤澤武久教授・赤平昌文助教授、大澤秀雄助手 研究事項 待ち行列の理論・信頼性理論とその応用・統計的予測理論・同推定理論・同決定理論 授業科目 統計数学・確率統計 応用物理学講座 権平健一郎教授・伊東敏雄助教授 研究事項 物性理論・統計力学・生命の物理・レーザー分光学・非線型光学 授業科目 物理学第一・物理学第二・物理学第三・物理光学演習第四、原子物理学第二・物理学実験・解析力学 応用化学講座 国分信英教授・山崎昶助教授 研究事項 環境化学・温泉・微量元素・計算機化学・無機化合物の合成・分析 授業科目 化学特論第一・材料分析化学・化学特論第二 応用理学講座 水橋誠二助教授・坂田朗助手 研究事項 分子・固体等の構造と結合様式・量子論による生物物理・物理数学・宇宙化学 授業科目 物理学第一・物理学第二・物理学第三 現在、理学系共通講座は自然科学系列を補い、工学系共通講座は各専門学科の授業内容を補う形で存在しており、一般教育系に混然合体され、専門講座本来の使命が果たされていないのが実情である。したがって、今後、技術教育において理学・基礎工学の重要性が高まると予測される点からも、理工学一体となった共通講座制度の抜本的な改革が成されなければならないであろう。
1-3 教職科目
- (教職学科目の現状、学科目紹介)
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教職科目(正式にいうと「教職に関する専門科目」)は、1965年度(昭和40年度)に本学で初めて開講された。高度成長期にあった当時、高校教育ではとりわけ工業科教員の不足に悩まされ、高校側らの強い要請もあり、またこうした社会的状況にこたえることも、工業系国立大学の使命であったので、本学卒業生が高校教諭工業科免許状を授与してもらえるように、教職学科目が置かれることとなった。
しかし、本学には教育学の専任教官は1名もいないため、全科目(教育原理・教育心理学・青年心理学・工業科教育法)を、非常勤講師に委嘱しなければならなかった。この状態は兼担教官の担当する一部科目(教育心理学・青年心理学)を除き、現在も続いている。これらの科目は全学生が聴講可能なように、夏季集中講義として、毎年7月中・下旬及び9月上旬の夏季休業期間中に開講されている。なお、教職科目ではないが、工業科免許状取得のために必須の専門科目である「職業指導」は、これを担当していた経営工学科の天沢不二郎教官の急逝により、臨時的処理として教職科目と並んで夏季集中講義の一つに加えられたが、それがそのまま今日にまで及んでいる。
1970年度(昭和45年度)より、本学卒業生に、高校教諭数学科及び理科免許状の授与される道が開かれ、それに伴って、教職科目の中に、「数学科教育法」と「理科教育法」が加わり、更に1978年度(昭和53年度)には中学校教諭一級数学科免許状の取得も可能となり、そのため「道徳教育の研究」もまた、教職学科目の中に加えられることとなった。
現在、本学で取得できる免許状の種類は、次のとおりである。
- 高校教諭一級免許状(大学院生のみ)
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- 数学
- 計算機科学科・情報数理工学科
- 理科
- 材料科学科・物理工学科
- 工業
- 電波通信学科・通信工学科・応用電子工学科・電子工学科・経営工学科・機械工学科
- 高校教諭二級免許状
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- 数学
- 全学科
- 理科
- 電波通信学科・通信工学科・応用電子工学科・電子工学科・材料科学科・物理工学科
- 中学校教諭一級免許状
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- 数学
- 経営工学科・機械工学科・機械工学第二学科・物理工学科・計算材料学科・情報数理工学科
現在、教職学科目として次の諸科目が置かれている。
教育原理(Ⅰ・Ⅱ)4単位、教育心理学・青年心理学4単位、数学科教育法(Ⅰ・Ⅱ)4単位、理科教育法(Ⅰ・Ⅱ)4単位、工業科教育法(Ⅰ・Ⅱ)4単位、道徳教育の研究2単位。これらのうち、道徳教育の研究は毎年開講されるが、教育原理Ⅰ、教育心理学、各教科教育法Ⅰと、教育原理Ⅱ、青年心理学、各教科教育法Ⅱとは、隔年に開講される。教育原理Ⅰでは教育制度論が、教育原理Ⅱでは教育目的論と教育内容・方法論が取り扱われ、各教科教育法Ⅰでは主として教材論が、各教科教育法Ⅱでは主として教授法が取り上げられている。その受講者数も年ごとに増加し、1978年度(昭和53年度)には、教育原理、教育心理学、数学科教育法の各科目を受講する者が、300名前後に達している。
なお、教職学科目としては、これらの夏季集中講義の外に、教育実習がある。教職に就くための実地経験を修得することを目的とした教育実習は、卒業年次の学生に課せられ、2週間にわたって、学校の現揚に赴いて生徒の教育や指導を実際に体験する。実習生の指導は、本学教官と実習校教職員によってなされる。教職学科目が開講されて以来、数年間、清都誠一教官が、実習校との連絡や実習生の指導を担当していた。その後、同教官が短大に出向されたため、現在では、3名の教育実習指導教官(任期1年)がその任にあたっている。
本学の実習委託校は、東京都立上野高校、世田谷工業高校、調布北高校など7校であるが、最近、それだけでは年ごとに増加する実習希望者を受け入れることができないため、その他の実習協力校にも委託している。実習協力校には2種類ある。一つは東京都教育委員会から本学の実習実績に基づいて割り当てられた学校であり、もう一つは、本学学生が自分の母校または知り合いの学校から実習受け入れの承諾を受けた学校である。1978年度(昭和53年度)における実習生の総数は93名であるが、このうち委託校並びに指定実習協力校(14校)における実習生は25名、個人開拓の実習協力校(13校)の実習生は68名であった。それでも、希望者全員の実習をまかなうことができず、学校以外の職場への就職希望者は実習をうける機会にはなかなか恵まれない。
他大学の実習者の中には、時として実習校で問題を起こす者がいるという話をよく聞くが、本学では、教職課程がおかれて以来、一度もそのような不祥事がなく、逆に実習生たちはみなまじめで教育熱心であるという好評のあることは、まことに喜ばしい。
- (教職学科目の将来像)
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1978年度(昭和53年)3月卒業者の教育職員免許状の取得者は51名(延べ55名)であって、その内訳は、高校教諭二級数学免許状取得者は21名、理科免許状取得者は18名、工業科免許状取得者は14名、中学校教諭一級数学科免許状の取得者は2名であった。また、同年に大学院を修了した者の高校教諭一級免許状取得者は19名である。しかし、これらのほとんど全員が教員志望であったにもかかわらず、現今の不況による就職難と、教職への全般的人気の高まりの世相を反映して、実際に教職に就いた者は、極めて少数にすぎない。
もちろん、こういう状況がいつまでも続くわけではなく、時代とともに、そして卒業生たちの教育現場での活躍や貢献が積重ねられるにつれ、本学における教員養成に対する社会からの期待も再燃してくるに違いない。そのために、大学側でも教職課程のいっそうの充実をはかることが必要であろう。
本学では将来の課題として、次のような構想を持っている。
- 教職学科目の夏季集中講義を解消して、平時の授業時間の中にこれを組み入れること。 そのためには、教職学科目の講義を非常勤講師に依存せず、専任教官が担当できるような体制をつくりたい。
- 教育実習を実習委託校や実習協力校にゆだねず、独自の実習施設である付属学校を持つこと。 しかも付属学校は、単に教育実習を担当する機関というだけでなく、 更に進んで、本学教官の諸研究の成果を結集させうる教育工学研究センターにまで発展させたい。
- 中学校教諭理科一級免許状の取得も可能にすること。 本学では、生物学と地学の授業が非常勤講師によって若干行われているにすぎないので、 現在のところ、この免許状が授与されていない。しかし将来は、これらの科目をもっと充実させ、 講義のみならず実験や実習もできるように、教官組織や研究設備を整えていきたいものである。